ブラームス 2つのクラリネット・ソナタの魅力と私の愛聴盤

クラシック音楽

クラリネット・ソナタはブラームスの最晩年の作品で、第1番のヘ短調と
第2番の変ホ長調の2曲がありますが、いずれも1894年のブラームスが61歳の時に
作曲され、ブラームスの魅力がうかがえる室内楽曲です。
「情熱的な1番」と「安らぎの2番」というとても対照的にな2曲であり、
晩年のブラームスの心境をあらわしていると感じます。
このクラリネット版同様にブラームス自身でヴィオラやヴァイオリンにも
編曲されていますが、私はブラームスが特に思い入れがあるクラリネット版の
ソナタが好みです。

作曲家ブラームスとは

ヨハネス・ブラームス(1833年5月7日生ー1897年4月3日没) 享年63歳
1833年にドイツ・ハンブルグに生まれ、バッハ、ベートーヴェンとともに
ドイツの「3大B」と呼ばれていいます。
父親は音楽家でありましたが家庭は非常に貧しく、ブラームスは家計を助けようと
ダンスホールにてピアニストとして生計をたてていたそうです。
性格は「人嫌い」、「偏屈」など孤独であったようです。
そのようなとき転機があったのは20歳の時に「シューマン」との出会いであり、
そのときのシューマンはブラームスのことを「この若者には何も足すべきところも、
何も引くべきところもない」と才能を絶賛したのでした。

クラリネット・ソナタ第1番へ短調 作品120-1

クラリネットの室内楽曲を作曲することになったのは、1891年ブラームスが
58歳の時に知り合ったクラリネット奏者であるリヒャルト・ミュールフェルトの
影響が大きいと言われています。
このクラリネット・ソナタ第1番へ短調は、1895年1月7日ウィーンで公の場で
ミュールフェルトのクラリネット、ブラームス自身のピアノによって初演されました。
また、クラリネットの作品にはクラリネット・ソナタの他、三重奏曲および
五重奏曲がありますが、いずれも晩年の素晴らしい作品です。

このクラリネット・ソナタ第1番は一言でいうと「情熱的」であり、晩年のブラームスの
心境が感じられる曲の一つです。
また、最後の作品となったこのソナタにはブラームスが最初に作曲したピアノ・ソナタ
第1番の主題から引用されていることも非常に興味深いです。
ブラームスはヨーロッパに古代から伝わる表現で完結することを意味する
「蛇が尻尾を嚙んで輪は閉じられた」と語ったのは有名で、まさにこの表現を用いて
自分の作曲家としての人生を語ったことはブラームスらしいです。

第1楽章 アレグロ・アパッショナート

ブラームス独特の悲しいメロディが冒頭から始まり、この主題のメロディが途中、
さまざまな形で現れます。
このなんとも言えないとりとめのない哀愁漂うメロディが、落ち着いた味を醸し出します。

第2楽章 アンダンテ・ウン・ポコ・アダージョ

美しいメロディでクラリネットが細かい旋律を奏でます。
不協和音の気だるい印象でピアノの繊細な響きと調和して、漂っている感じがします。

第3楽章 アレグレット・グラツィオーソ

レントラーと呼ばれるドイツの民芸舞踊風でとても華やかで心地よい楽章です。
中間部は長調から短調へ変わるのも聴きどころです。

第4楽章 ヴィヴァーチェ

ブラームスらしくない明るいメロディで始まりますが、途中ブラームスらしい影を
感じるメロディとなり、最後は高潮し終曲します。
クラリネットとピアノが語らうように聴く者の心にさまざまにか語りかけるようで、
主役と脇役が交互に入れ替わる絶妙なアンサンブルです。

クラリネット・ソナタ第2番変ホ長調 作品120-2

この第2番も1番同様1894年ブラームスが61歳の時に作曲され、ブラームスが
最初に作曲し「ピアノ・ソナタ第1番」の第2楽章の主題が引用されています。
クラリネットとピアノとの対話が豊かに表現された曲であると思います。

第1楽章 アレグロ・アマービレ

冒頭のゆったりとした旋律はイタリア語で「愛らしい、優しく」を意味する
「アマービレ」にふさわしく聴く者をうっとりさせます。
ブラームスらしい暖かさが感じられる旋律です。

第2楽章 アレグロ・アパッショナート

スケルツォ的で明るく、華やかでとても美しい旋律が心に残ります。

第3楽章 アンダンテ・コン・モート・アレグロ

ブラームスが得意とした変奏曲による最後の作品で抒情的な主題がとても魅力的です。

私の愛聴盤

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まとめ

この2曲のクラリネット・ソナタはブラームス最晩年の作品で、これまでに
ブラームス自身が歩んで来た人生をクラリネットが表現している名曲と言えるのでは
ないでしょうか?
ご興味のある方は、一度お聴きいただき、一人でもブラームスの愛聴者が増えれば
嬉しいです。
尚、私は専門家ではありませんので、あくまでも個人の意見として紹介をさせて
いただきました。

参考文献 吉田秀和氏 ブラームス 河出文庫 2019年
     三枝成彰氏 大作曲家の履歴書(下) 中央文庫 2012年
     神保璟一郎氏 クラシック音楽鑑賞辞典 講談社学術文庫 1994年
     ウィキペディア、クラシックミステリー名曲探偵アマデウスより

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